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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)362号 判決 1957年2月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

長谷川、成田両代理人の上告理由第一点について。

被上告人等の主張は、本訴をもつて上告人に対し本件賃貸借を解除するというにあることは、記録上明らかであつて原判決は右被告人等の主張を容れて原審口頭弁論の終結の時までに右解除は効力を生じたとするものであること原判文上明瞭であるから、特に原判決に右解除の効力を生じた日時が明示されないからといつて所論の違法ありとすることはできない。

同第二点第三点並びに脇田代理人の上告理由第三点について。

所論甲第一号証(土地賃貸借契約証)第四項の約旨についてした原判決の判断は相当であり、かかる解釈をもつて、所論のごとく、民法一条三項に違反するものとすることはできない。

長谷川、成田両代理人の上告理由第四点乃至第六点脇田代理人の上告理由第一点第四点について。

所論更改に関する主張は、原審の専権に属する事実認定の非難に過ぎず、右更改の事実を前提とする主張のとるを得ないは云うまでもなく、その他、本件の解除をもつて、或は権利の濫用であるとし、或は民法一条に反するものとする主張も容認することはできない。

長谷川、成田両代理人の上告理由第七点について。

催告並びに検索の抗弁権の附着する保証契約上の債権を自働債権として相殺することをみとめるときは、相殺者一方の意思表示をもつて、相手方の抗弁権行使の機会を喪失せしめる結果を生ずるのであるから、かかる相殺はこれを許さないものとした原判決の判断は正当である。(昭和五年(オ)六二八号同年一〇月二四日大審院第二民事部判決参照)

脇田代理人の上告理由第二点について。

所論は原審の認定しない事実を前提として本件保証債務に検索の抗弁権なしとして原判決を非難するものであつて採用することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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